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心不全

心房細動スクリーニングは心不全予防の入り口★

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「心房細動=心不全リスク」と明記

8月28日、欧州心臓病学会(ESC)の心不全ガイドラインが改訂された(Eur Heart J 2026年8月28日オンライン版)。改訂点は多岐にわたるが、注目に値するのは「心房細動」(AF)が「心不全発症リスク」として明記された点である(2021年版では言及なし)。

AFに伴う心不全発症リスク上昇は古くから報告されてきたが(BMJ 2016: 354: i4482)、やっとガイドラインで言及されるに至った。これをきっかけに、「AFへの介入による心不全予防」の研究も進むだろうか。

さらに、心不全リスクとなるAFは必ずしも「症候性」に限らないようだ。改訂ガイドライン発表の9日後の9月6日、スウェーデン・Karolinska UniversityのGina Sado氏らがEuropaceで明らかにした。

非侵襲的な「AFスクリーニング」は「脳卒中抑制」には有用性が証明されていない(Ann Med 2025; 57: 2457522)。しかし「心不全予防」であれば、一定の役割を果たしうるかもしれない。

「AF」は近年、「脳梗塞」リスクという側面に話題が集中していた感がある。今回のESCガイドライン改訂をきっかけに、「心臓病」としても再び注目されるだろうか。関連研究も整理しながら紹介したい。

AF検出率はSS研究3.7%、 SS II研究2.3%

今回Sado氏らが検討したのは、「AFスクリーニングで検出されたAF」と「その後の心不全発症リスク」である。

「症候性」AF例であれば先述の通り、その後の心不全発症リスク上昇が報告されている。しかしスクリーニングで検知された「無症候性」のAFは、心不全発症との関係が不明だった。

解析対象は、スウェーデンで実施された2つのランダム化比較試験(RCT)への参加例である〔STOPSTROKE(SS)研究とSTOPSTROKE II(SS II)研究〕。いずれも対象は75~76歳の住民)。

AFスクリーニング群の中から、心不全既往例を除外したSS研究の6,824例とSS II研究の6,601例が抽出された(SS II研究ではAFスクリーニング時「N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)<125ng/L」を「心不全発症低リスク」として除外)。

これらは全例、その後2週間、同デバイスを用いた心電記録を「毎日最低2回(30秒/回)」、加えて「症状を感じた際」に記録するよう指示された。

検討の結果、2週間のAF検出率はSS研究が3.7%、 SS II研究では2.3%だった。

AF検出群では心不全発症リスクが3~4倍超

そして本題の心不全発症率である。

まずSS研究だが、「心不全発症率」はスクリーニングAF「非検出」群が7%だったのに対し、「検出」群では23%だった(観察期間中央値6.9年)。諸因子補正後のハザード比(HR)は3.19の有意高値である。AF「非検出」と比べた害必要数(NNH)は1年間で「38」となった。

SS IIでも同様だった。心不全発症率はそれぞれ5%と20%。「心不全発症」HRはAF「検出」群で「非検出」群に比べ4.73の有意高値、NNHは1年間「31」だった(追跡期間中央値5.1年)。

またSS、SS II研究のいずれも、AF「検出」群と「非検出」群の発生率曲線は、スクリーニング後半年ほどで乖離を始め、その後一貫して群間差は広がり続けた。

AF検出群の心不全発症リスクはAF既往例と同等

興味深いことに、「AF検出」群における心不全発症率/リスクは、スクリーニング前に「AF既往」があった群と差がなかった(図)。「スクリーニング検出AFは決して良性の状態ではない」とSado氏らは考察している。

図. SS研究における心不全発症率

(Europace 2026年9月6日公開論文)

なおSS II研究では、AFスクリーニング時のNT-pro-BNP値が記録されている。そのため「AF検出」群における「NT-pro-BNP値と心不全発症リスク」の相関を知りたいところだが、症例数が少なかったためだろうか、論文には掲載されていなかった。

しかし、どのような例で心不全発症リスク評価のためにAFスクリーニングをすべきか絞り込むためには、必要なデータである。予備的解析であっても、今後の報告を期待したい。

AF検出後の心不全予防策は…

さて上記の結果から、「AFスクリーニングは心不全早期発見・管理の入り口になりうる」とSado氏らは考察する。しかし同時に、「現状ではAF例の心不全発症を予防する良い方法はない」とも記している。AFを見つけた後の心不全予防策は、今後の課題ということだろう。

ただし、参考になるRCTは存在する。EAST-AFNET 4である(N Engl J Med 2020;383: 1305-1316)。

同試験の対象は、「診断から1年以内」という早期AF 2,789例(心血管高リスク限定)。標準治療にリズムコントロール「追加」で「非追加」に比べ、「死亡・脳卒中・心不全/急性冠症候群入院」HRは0.79の有意低値となった。ただし、治療必要数(NNT)は1年間で「91」。

「心不全入院」に限っても、有意差には至らなかったものの「追加」群におけるHRは0.81の低値だった。

つまり、診断後早期AFであれば、リズムコントロールによる心不全発症抑制が示唆される。さらなる検討が待たれる。

なおEAST-AFNET 4試験におけるリズムコントロールは、ほとんどが抗不整脈薬による薬物療法だった。アブレーション施行率は低く、試験開始時が8%、2年後でも19%止まりだった。

しかしその後のRCTからは、アブレーションはAFに対する初回治療として、抗不整脈薬を上回る再発抑制、また試験によっては「AF負荷」減少作用が報告されている〔EARLY-AF (N Engl J Med 2021; 384: 305-315)、STOP-AF First(N Engl J Med 2021; 384: 316-324)、Cryo-FIRST(Europace 2021; 23: 1033-1041)〕。

今後「心不全発症予防」に注力するのであれば、早期AFアブレーションを介した心不全発症抑制、これを検討する臨床試験が実施されてもよいのではなかろうか。

なおEARLY-AFなど上記RCTはいずれも、対象は発作性AFだった。しかし最近、永続性AFに対しても、初回治療としてのアブレーションは抗不整脈薬に比べ再発を有意に抑制するとのRCT “CEPAF”も中国から報告された(Europace 2026年9月1日オンライン版)。

永続性AF例は非AF例に比べ、心不全発症リスクが8〜10倍上昇すると報告されている(JACC Adv 2025; 4: 101556)。介入により心不全発症を予防できればその効果は大きい。

ESCガイドライン改訂を契機に、AF例における心不全予防に光は当たるだろうか。注目したい。

Sado氏らの今回の解析に、外部からの資金提供は報告されていないという。

その他のピックアップ論文(8月31日~9月6日)

【東アジア人LAAO後の低用量リバーロキサバン vs. 抗血小板薬】Eur Heart J 8月31日公開

中国RCT “HALO-SCE”。経皮的左心耳閉鎖術(LAAO)施行後「リバーロキサバン15mg/日+アスピリン100mg」を45日間服用できた164例をランダム割り付けし、非盲検下で1年間観察。その結果、「リバーロキサバン10mg/日」で「アスピリン・クロピドグレル併用(180日間)→アスピリン単剤」に比べ、1年後の「無症候性脳塞栓病変」出現は有意に減少。NNTは「6」。認知機能指標もリバーロキサバン群で有意に良好。

【米国における心不全入院例心リハ実施率と生存への影響】J Gen Intern Med 9月3日公開

米国で公的医療保険受給の65歳以上心不全入院11万6,302例(平均82歳)を解析。その結果、退院後1年間に35%が死亡。180日以内に心臓リハビリテーション(心リハ)を開始したのは1.5%のみ。「心リハ開始」で死亡の補正後HRは0.55の有意低値。各種感度分析でも同様。

【日本人高齢高血圧ではARBに「降圧を超えた有用性」?】Hypertens Res 9月3日公開

日本における診療報酬・健診データを用い、65歳以上でアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)かCa拮抗薬(CCB)を1年以上服用の5万9,558例を解析。その結果、ARBとCCB間でその後5年間の「主要心血管イベント」「心筋梗塞」「脳卒中」リスクには差なし。一方「心不全入院」はARB群で補正後HRが0.82の有意低値。NNTは「67」。「末期腎不全/透析」に至ってはHR0.16(有意)。ただしNNTは「334」。なお、降圧度は両群で同等。

【ステージ4~5保存期CKD合併AFにOACは不要?】JAMA Netw Open 9月4日公開

米国研究。65歳以上でAFを呈するステージ4~5保存期慢性腎臓病(CKD)4万2,052例を傾向スコア逆重み付けして比較。その結果、「アピキサバン」開始(1万4,712例)で経口抗凝固薬(OAC)「非開始」(2万1,005例)に比べ、119~153日間(中央値)の「出血・脳梗塞」HRは1.05(有意差なし)。「ワルファリン」開始では「OAC非開始」に比べ1.95の有意高値。


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